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「問題」と「課題」を区別できない人は仕事を失います

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 皆さんは、「問題」と「課題」という言葉の違いが説明できますか。

 大手企業で年配の方でも間違えているのを日常的に目にしますし、テレビのニュース番組でも間違えているように聞こえることがよくあります。

 「問題」と「課題」の違いをきちんと認識しないと問題解決を行う(=仕事を進める)上で的外れなことに取り組んでしまう可能性が高いです。結果的に仕事を失うことに繋がります

この記事はこんな方におすすめ
  • 問題と課題の違いは何か答えられない
  • これまで何となく課題という言葉を使っていた
  • 論理的思考・課題解決が苦手だと感じている
  • 将来仕事をする上で重要なことを知りたい

 これから社会人として働くという学生の方には、仕事をする上でどんな考え方が必要なのかイメージできると思います。

今回の内容は真面目な内容で文字多めになりますので、ヒューストン空港の面白い実例だけでも読んで頂けたら嬉しいです。

 「こんな言葉の違いを知ったからってどうなるんだ、細かいこと言うなよ」と思われる方もいらっしゃると思いますが、この違いが分かっていないと問題解決を行うのが下手ですとアピールするようなものです。是非、この機会に違いを知って頂ければと思います。

「問題」と「課題」を間違えている例

 「このデバイスは計算能力が低いことが課題です。」

 「このプロジェクトは計画が明確でない点が課題です。」

 「体重が増加していることが最近の課題です。」

 上に書いた例は全て間違っています。全て「課題」ではなく、「問題」です。なんとなく、悪い状況に対して、「課題」と表現してしまう方が多いと思いますが実は間違っています。

 「課題」の辞書的な意味として「解決すべき問題」と出てきたりするので、日本語表現として間違っているとは言い切れないです。なのでテレビ番組でも同様の間違った表現が聞かれるのだと思っています。

 しかし、明確にいっておきたいのは、「ビジネスシーンでは絶対に区別して使うべき」ということです。

「課題」と「問題」の定義

 ビジネスのシーンにおいての定義は日本の国家標準である日本産業企画のJIS規格の定義を参考にするのが良いでしょう。

 JISの定義(JIS Q 9024:2003)では

問題とは「設定してある目標と現実との、対策して克服する必要のあるギャップ」

課題とは「設定しようとする目標と現実との、対処を必要とするギャップ」

です。

 私の業務経験を基に言い換えれば、問題とはあるべき姿と現状とのギャップで、課題はあるべき姿に到達するための対処です。

問題と課題の図示

 例えば、「体重60kgが目標なのに現状70kgである。」とします。この時、問題は体重が目標の60kgより現状の体重が10kg多いことです。

 まさに、理想と現状のギャップ10kgが問題です。そして、この問題を解決するために行うことが課題です。例えば「毎日5km走る!」が課題になりえます。

単なる言葉の違いではないのか

 全てのビジネスは誰かのお悩み(問題)を解決するから成り立ちます。

 ホームランを沢山打つメジャーリーガーもそうです。お客さんの退屈な日常(問題)を楽しいものに変えるという問題解決をしていますし、球団やスポンサーがそれによって観客動員が増えれば悪い収益(問題)を解決します。

 なので、皆さんもどんな形で収益を得ていても基本的には誰かの役に立つために行動しています。そんな中で、何が問題で何が課題なのかを明確にすることは非常に重要なことです。それは、問題解決の流れが正しく理解できていないことを示すからです。

 基本的な問題解決の流れは、まずは何が問題かを特定することです。

 例えば、「体重60kgが目標なのに現状70kgである。」場合の問題は体重が10kg多いことでした。

 次にやることは、本当の問題は何か探る「真因分析」をすることです。簡単に言えば、問題の原因を探り切れないところまで探る作業です。

 体重が10kg多いのは何故か?→食べる量が多いから→食べる量が多いのは何故か?→1日の中で食べる回数が多いから

 このような感じで深堀りした時に、問題が具体的に把握できるようになります。そして、打てる対策も明確になって実行可能性が高まります。ここでは、例えば「毎晩寝る前におかしを食べていた」とすると「1日の中で食べる回数が多い」を解決するために「夜寝る前はおかしを食べない」ことが課題となります。

 そして、この「夜寝る前におかしを食べない」という課題を達成するために対策を検討するのが次のステップです。例えば、「おかしを買わないようにする」が1つの対策になるでしょう。

 このようなプロセスで問題発見→問題の真因特定→課題設定→対策設定→対策実行→結果確認という流れで問題解決を測ります。

 「問題」と「課題」という言葉の違いを説明できないということは、即ちこの流れを知らないということです。

仕事に及ぼす影響

 「問題」と「課題」を区別できない方は次のような傾向があります。

  • いきなり課題を設定する
  • 課題を達成しても解決しない

いきなり課題を設定する

 先ほど書いたように、何が問題かを特定するところから問題解決がスタートするのですが、そのステップを飛ばしてしまいます。

 最初に「このデバイスは計算能力が低いことが課題です。」という文章を書きましたが、これは実際に私が会社で聞いたことのある実例です。「デバイスの処理能力を上げるための対策が必要」とその後に説明されていました。その場は、部長クラスまでの方が全員集まって、プロジェクトの進捗を聞くようなところでした。

 でも、この内容だけだと何がどれくらい問題で、どれくらい改善したらゴールなのか分からないです。「何かこういうことがヤバそうです。」と表現するのと同じレベルです。少なくとも、聞く側はそのレベルでしか受け取れないです。

 問題が何なのか?何を目標としているのか?をきちんと明確にしないと、実際に問題が起きているかもしれないけどその解決に取り組む優先度の判断ができないので、報告を受ける上長は困ります

課題を達成しても解決しない

 問題が何なのか、問題の根本原因である真因は何かを捉えることは非常に重要です。理由は、間違った問題認識は効果の無い対策に取り組む可能性が高くなるからです。

 現在の体重が70kgで目標が60kgの場合に「毎日5km走る」が課題になり得ると先に書きました。その後、真因分析した後では同じ例を使いましたが、「夜寝る前はおかしを食べない」ことが課題になりました。

 前者よりも後者の課題の方が問題解決に繋がる可能性が高いということは理解できますでしょうか。よく「ダイエットのために走ろう!」と言ってあまり目標や現状も把握せずに、取り敢えず走り出すことはあると思います。それ自体は行動的で良いのですが、やはり問題が何か把握していないと空回りする可能性が高いです。

 一方で、現状と目標を把握した上で、問題の原因を探ると、なぜ理想と現状にギャップがあるのかの原因が分かり、それを取り除くための行動を取ろうとするので、前者のように盲目的に行動を起こすよりも適格な行動を取ることができて効果がでやすいです。

 今回の例では、実は食べ過ぎているということが問題と分かったので、運動量を増やすよりも食べる量を減らす方が効果的ということです。

 このように、いきなり根拠もなく課題を設定すると問題が解決するか分かりません。

 個人的には、問題は何かを真剣に考えて、視野を広く持って解決すべき問題を再定義するなどして、誰も考えもしなかったような解決策が浮かんで、一気に解決していくということは起こり得ると思っています。

 有名な例ですがヒューストン空港での面白い問題解決事例があります。

ヒューストン空港で本当にあったおもしろい話

 空港に飛行機で到着したお客さんはその後歩いて自分の荷物を受け取りにバゲージクレームという荷物の受け取り場所に歩いて向かいます。

 しかし、このバゲージクレームで自分の荷物が出てくるまでの時間が長く、お客さんから不満の声が多数出ていたそうです。

 ここで、「職員が荷物をバゲージクレームに流すまでの時間を短くすることが課題です!」と言ってしまうと苦労します。

 確かに、荷物を受け取るまでの時間を如何に短くするかを考えるのは当然ですし、正しそうです。しかし、これは問題を「飛行機到着から荷物をバゲージクレームに持って行くまでの時間が長い」ということにしているからそうなるのです。

 ヒューストン空港は問題をこう定義しました。

「お客さんがバゲージクレームで荷物を待つ時間が長く感じる」ことを問題としました。

 本来の目的は、クレームが多いことなので、お客さんにどう感じてもらうかが重要です。お客さんが荷物を待つ時間が短いと感じることが重要なのです。

つまり、実際に時間が短くなったかは、それに比べれば重要ではありません。

 そこで、ヒューストン空港はこんな対策をとりました。お客さんが飛行機を降りてからバゲージクレームにたどり着くまでの道を複雑に入り組んだ構造にしました。これによって、お客さんがバゲージクレームにたどり着くまでの時間が以前より長くなりました。一方で、荷物側のオペレーションには全く手を加えませんでした。

 結果的に、お客さんはバゲージクレームという同じ場所で「荷物を待つ」という体験をする時間が減ったのです。これによって、お客さんからのクレームの件数は激減したそうです。

ユーザエクスペリエンスの改善例

 このように問題が何なのかをしっかりと考えて、時には再定義することが重要であることがお分かり頂けたと思います。

主体的に仕事するようにならないと気づかない

 大学院を卒業して初めて会社に入って説明資料を作って説明した時に、上司から優しくこんなことを言われたのを覚えています。

 「言葉にうるさい人が見ると注意されることがあると思うから言っとくんだけど、問題は現状とあるべき姿のギャップで課題はその問題を解決するためにやることだよ。」

 私はそこで初めて、この違いを知りました。

 その時は、言葉の違いくらいにしか思っていませんでした。上司の言葉のニュアンスとしてもそんな感じだったので。

 これは他の表現で例えるならば、「これから発表させていただきます。」じゃなくて、「発表します」と言うべきだなんて話もよく聞きますが、そんなレベルだと思っていました。

 でもその後私は、自分なりにプロジェクトの計画を考えたり、どんな検討をしないといけないかを考える立場になって初めてこの重要性に気づきました。

重要というよりは、きちんと使い別ける必要がでてきました。

 恐らく、状況によってはこの言葉の違いを意識しなくてもなんとなく上手く行くのだと思います。

 しかし、何か新しいことを自分で0から始めたり、新しい製品やサービスを考案するようなビジネスをする上ではかなり重要かなと思います。

 本当は全分野の仕事で重要なはずなのですが、実際間違って使っている人は意外と多いので。。

 そう考えると、言われたことをただこなすような仕事のやり方を続けられるのであれば、この記事で書いたような区別はできなくてもよいかもしれません。

まとめ

 今回は意外と間違えている人が多い、「問題」と「課題」の区別について書きました。

私が言いたかったこと
  • 問題と課題には明確な違いがある
  • 問題はあるべき姿と現状のギャップ
  • 課題は問題を解決するためにすべき施策
  • 問題が何であるかをきちんと定義できないと問題解決できない可能性がある

 もし間違えて使っていた方やあまり意識してこなかったという方がいらっしゃいましたら、是非意識して使い分けてみて下さい。

 思考回路も変わっていくはずです。

 厳しめのタイトルにしましたが、実際「問題」と「課題」の違いなんて意識しなくても十分仕事はできると思います。

 ただし、よりよい仕事ができるように区別して考えるのが私は良いと思っています。この記事をきっかけに考えてみて頂ければ幸いです。

 最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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